出雲大社前

一畑電車大社線

出雲大社まで約359m 約4分20秒

【寺社】フルネーム系前駅一直線型

  • 1930(S5).2.2「大社神門」
  • 1970(S45).10.1「出雲大社前」

まるで小さな教会のような駅舎だ。ステンドグラスからもれる赤や緑や青の光が、待合室の真っ白な壁に映って敬虔な気持ちにさせる。その壁にも左官職人によるものだろう、様々な模様が施されている。昔ながらの木製の券売窓口なども残されていて、鉄道の神様に思わず手を合わせたくなった。開業に合わせて建設され、1996(H8)年には国の登録有形文化財に指定されている。

駅は出雲大社正面に伸びる神門通りにあり、ゆるやかな登り坂をまっすぐ行くと森が見えてくる。勢留という鳥居前広場の大社側の一番端までを測定した。調査のあと駅の近くのいとうという店で割子になった出雲そばを食べた。

神話のもうひとつの大本山とも言える場所なのでわくわくする。20代や30代の女性グループが多く、頭の上で大きく手を広げている大国主の像の前で、そのポーズを真似して写真を撮っている。あちこちに因幡の白兎のモニュメントが展示されていて、出雲大社のキャラ的な扱いを受けていた。

大国主命が現在の天皇の祖先である天照大神に国譲りをし、その代わりに壮大な宮殿が贈られ、それが出雲大社が始まりとされている。それにしても、平安時代には本殿の高さが48mあったというのだから驚く。階段が一直線につながっていたらしいが、長さだって相当だろう。今の時代にそのスケール感の建物があっても、きっと不気味に違いない。

神話関係の本を読むと、どうしても大国主一族を応援してしまう。判官贔屓は義経よりはるか昔の、この時代からのものなのかもしれない。巨人よりヤクルトが好きなのも古えからの遺伝子の仕業だったりして。巨人ファンの皆さん、すいません!

駅の大社と反対側には、1990(H2)年に廃線になった旧国鉄大社線大社駅が残されている。重厚な木造の純和風建築で、玄関を入った正面の券売所は窓口のひとつひとつに小さな破風がつけられている。大社町日本観光旅館連盟御案内の看板に連なる宿の名から、かつてのにぎわいが忍ばれる。すごさに屈服という感じだが、あまりにすごすぎてやっぱり一畑電車を応援してしまう。ここにも天照と大国主のような構図が。

大国主側であるはずの出雲大社のホームページは、参拝者にJR出雲市からバスで来ることを勧めている。そりゃ電車だと一回乗り換えないといけないけど、途中の幼稚園に古い電車が保存されているのが見えたりして面白いよ。がんばれ、一畑電車!

参考文献 日本鉄道旅行地図帳、全国駅名辞典、出雲大社ホームページ