前駅とは?

よく、前にあっても横にあっても遠くにあっても前駅、なんてことをいう。

三越前や成城学園前といった「前」のつく駅は、本当に「前」にあるのか?気になったので調べてみた。実際に駅まで行って、改札から「前」にあるものの、駅から一番近い入口までの距離と所要時間を測るのだ。

使うのはロードメジャー。棒の先っぽにメーターと車輪がついた、伊能忠敬の持っていそうな(たぶん、持ってない)あれだ。車輪を転がして距離を計測する。今のは2代目で、初代は岡山駅前を調査中、車輪の向きが固定できなくなった。計測の途中でいつの間にか車輪がくるっとうしろ向きになり、目的地に着いたときには距離計はゼロを表示していた。所要時間はストップウォッチで測る。西新井駅前のイトーヨーカドーで買ったQ&Qというメーカーの安物だ。

調べてみると、「前」と謳っているからといって近い駅ばかりではなく、ものすごく遠い駅やすでに施設がない駅など、様々なタイプがあることが分かった。効率とか利便性、速さを第一とする鉄道の中でも、「前駅」はそれらを最も追求した形態だと思う。もともとの地名を無視し、集客を見込める施設名を冠する。駅名を見ただけで近くに施設があることが分かるため、「ここに行くにはどの駅で降りればいいのかな」と調べる行為すらさせない。そんな無味乾燥なはずの前駅に、「実は不便」とか「全然前じゃない」という揺らぎが存在していたことが面白かった。

分類は2種類。駅名の種類を表した「系」、駅と施設の関係を示す「型」に分け、「〜系〜型前駅」と呼ぶことにした。

以前読んだ、今尾恵介さんの「消えた駅名」もきっかけのひとつだ。明大前が昔、「火薬庫前」だったという記事に衝撃を受けた。ただでさえ、施設名+前という身も蓋もない前駅名にあって、気取らないにもほどがある。そんな駅名をつけたら敵にばれるよ。

そんなこんなで調査を始めた。全国に330ある前駅のうち、まだ190ほどしか訪れていないうえ、まとめてみると調査時との考え方の変化や、単純な計測ミスなども出てきて、再調査となったものが20件近くあった。まあ、気長にやっていこうと思う。

お付き合いください。       

                                     古今亭駒治

参考文献

日本鉄道旅行地図帳 今尾恵介監修 新潮社

全国駅名事典 星野真太郎著/前里孝監修 創元社

停車場変遷大事典 JTB